・月次点検・年次点検
・無停電での年次点検
・保安規定
電気主任技術者の仕事で一番イメージされる電気設備の点検。点検って具体的にどんなことしていると思いますか?
具体的なイメージが湧かない人って意外と多い。
この記事では電気主任技術者の仕事で多い電気設備の点検業務を紹介します。月次点検と年次点検、無停電の年次点検。点検やその他について記載する保安規定の説明、を紹介します。
電気設備の点検って何?
電気事業法によれば、「電気工作物」を扱う事業者は、それらの定期点検を自主的に行わなくてはなりません。
一般的に電気工作物とは、発電設備・送配電設備・構内電気設備などの電気設備のことで、家庭用の設備は違います。
定期点検は義務であるものの、細かい点検内容は決まっていません。
これは、電気設備の種類や用途がそれぞれ異なるためです。
事業者は保安規定を作成し、産業保安監督部に提出します。
この保安規定に従って定期点検を行ってので実は大切なものです。
定期点検
1ヵ月に1度実施する月次点検や年に1度実施する年次点検が該当します。
具体的にどういうことを点検で行うのか見ていきましょう。
月次点検
月次点検では外観点検と測定の2つがあります。
○ 外観点検で確認する設備
- 引込設備
- 受電設備
- 受・配電盤
- 接地工事
- 構造物
- 発電設備
- 蓄電池設備、負荷設備
○ 測定で確認する内容
- 設備電圧、負荷電流の測定により電圧値の適否及び過負荷等を確認
- B種接地に係る漏れ電流の測定により低圧回路の絶縁状態を確認
- 高圧機器本体及び接続部等の温度測定により過熱を確認
出典:自家用電気工作物の標準的な点検項目について…経済産業省
月次点検では運転中の機器の外観点検で問題がないか確認することと電圧と電流が測定し正常かどうかを確認、漏れ電流の測定、機器の温度測定となっています。
仕事上で覚えるのは漏れ電流の測定、温度測定の機器取扱、測定箇所くらいで覚えにくい、覚えることが多くて大変ってことはなさそう。
漏れ電流の測定は会社や設備によって違いますが、簡単なのはクランプメーター使う場合ですね。
クランプメーターで測定するときは接地線を挟む場合と電線を2-4本挟む場合がありますよ。
接地線は漏れ電流が流れるのでイメージしやすいですが、電線を単相2線式の場合は2本、単相3線式、三相3線式は3本を、三相4線式は4本の電線を挟むと漏れ電流が測れます。
クランプメーター以外に漏洩電流測定器で測定するところもあります。
基本は一緒ですが、機器の取り扱い方法は違うので注意してください。
毎月する作業なので自然と覚えるけど早く覚えられるようにしたほうが良いね。
電圧、電流は測定箇所があって、そこで測定するだけでテスタの使い方が知っていればいいから簡単だね。
年次点検
停電により設備を停止状態にして行うもので、月次点検の内容に加え、原則として年に1回以上、次の各号の確認を行います。
- 低圧電路及び高圧電路の絶縁状態が技術基準を満たしていることを確認
- 接地抵抗が技術基準を満たしていることを確認
- 保護継電器の動作特性及び連動動作試験の結果が正常であることを確認
- 非常用予備発電装置の起動・停止・発電電圧・発電電圧周波数が正常であることを確認
- 蓄電池設備が劣化していないことを確認
出典:自家用電気工作物の標準的な点検項目について…経済産業省
年次点検は停電して行います。
停電するまでの手順や操作をまず覚えないといけません。各施設ごとにマニュアルはあるでしょうけど年1回しかしないので事前の確認は欠かせませんね。
停電して行うので施設の全てが停電することもあるのでバックアップの発電機を使うこともあります。
年次点検では、絶縁抵抗、接地抵抗の測定。非常用発電装置の試運転。保護継電器の動作特性と運動動作試験、蓄電池設備のそれぞれ試験、確認を行うので作業量が多く大変です。
必要があればバッテリーなどの交換を行います。
停電して行うので電気設備の点検清掃も行うため、さびの有無、締め付け確認、埃などの汚れを落としたりというような作業も行うため多くの人が同時に複数の作業を行うので管理が大変です。
年次点検だと停電して電柱に昇ることありますが、応援で来てもらった電気工事士の人にお願いしたりしますね。電気工事士の人だと日頃から電柱に昇っているので早くて正確ですから。
電気主任技術者は管理する側になるので当日の配置、動き、指示と大変ですよ。
年に1回しか行わない機器の取り扱いや注意点、どう使ったら機械が壊れるかなどを知っておかないとトラブルになるので注意しましょう。
こういう試験時に設備壊したってこと聞いたこともあるので事前の確認含めてきちんとしましょうね。
無停電での年次点検
無停電での年次点検が認められるケースもあるんです。
信頼性が高く、内規(年次点検)に定める点検と同様と認められる無停電による年次点検が1年に1回以上行われる事業場については、停電を伴う年次点検を3年に1回以上とすることができます。
信頼性の高い機器
具体的には
設備を構成する個々の機械器具において、設計上、製作上又は施工上支障があるものではないこと。
保安上の観点から、設備構成に一定の信頼性が認められるものであること
設備環境上支障のあるものではないこと。ただし、適切な対策が講じられているものは除く。
使用実績又は維持管理状況を踏まえて、次回の停電年次点検まで(3年後まで)の間における 設備の信頼性に支障が認められるものではないこと。
保安管理に係る体制に支障のあるものではないこと。
設備を構成する個々の機械器具において、設計上、製作上又は施工上支障があるものではないこと。
ということでリコールの対象になっていない、保安上の注意喚起などのトラブルがないなどが該当します。
個々の機器でトラブルが起こっていないか確認することが無停電での年次点検を行うための最低条件ですね。
保安上の観点から、設備構成に一定の信頼性が認められるものであること
イ 柱上に設置した高圧変圧器がないもの
ロ 高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く。)に可燃性絶縁油を使用していないもの
ハ 保安上の責任分界点又はこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器又は地絡遮断器が設置されているもの
ニ 責任分界点から主遮断装置の間に電力需給用計器用変成器、地絡保護継電器用変成器、受電電圧確認用変成器、主遮断器用開閉状態表示変成器及び主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの
ということが条件として挙げられています。
設備環境上支障のあるものではないこと。ただし、適切な対策が講じられているものは除く。
例えば
腐食性ガスや可燃性ガス等の滞留する場所に設置されていないこと。
高温多湿による保安機能の支障が生じる環境に設置されていないこと。
塩害による保安機能の支障が生じる環境に設置されていないこと。
が挙げられます。
厳しい環境に設置されている設備に関しては無停電での年次点検対象外ですね。
使用実績又は維持管理状況を踏まえて、次回の停電年次点検まで(3年後まで)の間における 設備の信頼性に支障が認められるものではないこと。
前回の停電年次点検において、内規で定める点検が実施されており、その結果(修理等を行った場合にはその結果も含む。)が支障ないこと。
前回の停電年次点検以降で実施した無停電での年次点検及び直近までの月次点検の結果(修理等を行った場合にはその結果も含む。)が支障ないこと。
製造者等が推奨する取替更新時期内であるもの又は保安に関する適正な余寿命評価(次回の停電年次点検までの期間(3年後までの期間))を行ったものであること。
が挙げられます。
当たり前ですけど設備に支障がある場合はダメなので、寿命が残っているか、点検の結果が良いかなど設備そのものの状態が良くなければなりません。
保安管理に係る体制に支障のあるものではないこと。
年次点検(停電及び無停電)の実施方法が、保安規程又は保安規程の下部規程等に定められていること。
保安規定に無停電で行うならその方法などが記載されていないとダメなので、無停電で行うために保安規定の改正が必要なところも多いでしょう。
出典;主任技術者制度の解釈及び運用(内規)(令和3年3月1日付け20210208保局第2号)4.(7)③イ括弧書きにおける停電点検の延伸に係る要件の明確化について…経済産業省
年次点検に定める点検
年次点検項目の確認その他必要に応じた測定・試験を行います。
低圧電路の絶縁抵抗が規定値値以上であること並びに高圧電路が大地及び他の電路と絶縁されていること。
接地抵抗値が規定値以下であること。
保護継電器の動作特性試験及び保護継電器と遮断器の連動動作試験の結果が正常であること。
非常用予備発電装置が商用電源停電時に自動的に起動し、送電後停止すること並びに非常用予備発電装置の発電電圧及び発電電圧周波数(回転数)が正常であること。
蓄電池設備のセルの電圧、電解液の比重、温度等が正常であること。
年次点検は基本停電して行うのを無停電で行えるようにするので、どういう設備が必要なのかわかります。
低圧電路の絶縁抵抗が規定値値以上であること並びに高圧電路が大地及び他の電路と絶縁されていること。
絶縁監視装置による監視結果又は漏れ電流計による測定結果が良好であること。また、外観点検の結果(必要に応じた超音波式部分放電探査やサーモグラフィ等による過熱部位の有無の確 認を含む。)が良好であること。
絶縁監視装置が付いている設備が良いですね。漏れ電流測定結果が良好な場合でもOKですよ。絶縁監視装置を新たに設置するのも一つかもしれませんね。
接地抵抗値が規定値以下であること。
簡易的測定方法による測定値に余裕をもって推測する方法。
過去より直近までの測定値の評価及び接地設備に係る外観点検(必要に応じて端子間の導通状況の確認)をもって推測する方法。
接地抵抗が基準値を下回っていること、直近までの測定値も大切ですね。
保護継電器の動作特性試験及び保護継電器と遮断器の連動動作試験の結果が正常であること。
前回の停電時に実施した保護継電器単体の動作特性試験結果が良好であること。
前回の停電時に実施した遮断器のトリップ回路の内部抵抗、絶縁抵抗等の測定結果及び過熱 部位の有無等の確認結果に係る測定値等の評価結果が良好であること。また、遮断器のグリスアップ等が適切な頻度で行われていること。
前回の停電時に実施した保護継電器から遮断器までの設備(関連設備を含む)の外観点検(必要に応じて端子間の導通状況の確認)の結果が良好であること。
前回の試験結果と外観点検が良好であることという前回の結果が良くなければ無停電での年次点検で次の停電まで3年あるので設備に問題があるのはNGですよ。
非常用予備発電装置が商用電源停電時に自動的に起動し、送電後停止すること並びに非常用予備発電装置の発電電圧及び発電電圧周波数(回転数)が正常であること。
模擬信号等による起動及び停止と発電電圧及び発電電圧周波数(回転数)が正常であることの確認。
日頃からの発電装置の点検は大切ですよ。
蓄電池設備のセルの電圧、電解液の比重、温度等が正常であること。
蓄電池設備のセルの電圧、電解液の比重、温度等が正常で異常がないこと。
設備に支障があるのはNGですよ。
出典;主任技術者制度の解釈及び運用(内規)(令和3年3月1日付け20210208保局第2号)4.(7)③イ括弧書きにおける停電点検の延伸に係る要件の明確化について…経済産業省
無停電で通常の年次点検と同じことをする場合は設備状態が良くないとダメですね。
無停電での年次点検も3年に1回は停電での年次点検が必要なので停電できないとダメです。
次の停電まで3年あるので、3年の間に機器が故障したら困りますし、問題が出ないことを前提に無停電を認めているからです。
停電したほうが良いのは確実ですからね。絶縁抵抗測定、保護継電器の動作特性及び連動動作試験とかは停電して測ってみないわかりませんからね。
蓄電池とかであれば〇年で交換という基準を守って交換すればいいですけど、停電して測定しないとわからないところは3年間問題なく運転できないとダメですもんね。
保安規定
定期点検は義務であるものの、細かい点検内容は決まっていません。
これは、電気設備の種類や用途がそれぞれ異なるためです。
事業者は保安規定を作成し、産業保安監督部に提出します。
保安規定の内容は
- 保安のための関係法令と規定を守るコンプライアンス体制
- 主任技術者の組織と職務
- 主任技術者の職務範囲と内容
- 保安教育の内容
- 電気設備の工事・維持・運用の方針と体制・計画・実施・評価・改善について
- 電気設備の工事・維持・運用の文書作成・変更・承認・保存の手続き
- 電気設備の工事・維持・運用の文書の位置づけ
- 電気設備の工事・維持・運用の記録に関すること
- 事業用電気工作物の巡視・点検・検査・運転・操作方法
- 発電所の運転が停止された場合の保全方法
- 災害など非常事態時の措置
- 事業用電気工作物の保安のために部品や役務を調達する内容と管理方法
- 保安規定の定期的な点検や改善
- その他事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安に関し必要な事項
出典:経済産業省「電気事業法施行規則第50条の解釈適用に当たっての考え方」
改定が必要なこともあるので電気主任技術者だと職務上お世話になることが多いですね。